チェンマイライフを語りタイ |「山口豆腐店」創業者・山口薫さんインタビュー

チェンマイでこだわりの豆腐作りを手がける「山口豆腐店」創業者の山口薫さんにロングインタビュー。全く経験のない豆腐作りを始め、今は家族みんなで本当の家内制手工業で100%手作りの豆腐をバンコク・チェンマイで販売しています。

プロフィール

名前山口薫(やまぐち かおる)
出身山形県山形市
年齢昭和39年生まれ
趣味ゴルフ
ご家族写真右から長男の龍一(りょういち)くん・奥様のターさん・長女の香(かおり)さん
なかよし家族で手作り豆腐

Q.タイに来たきっかけは?

 初めてタイにきたのは1996年、32歳の時です。地元山形の同級生が、タイで何かやりたいという相談があったのです。当時東京のリゾート会社に勤めていたのですが、バブルも終わり転職先を探していたところにお話をいただき、タイには行ったことがなかったのですが、これ幸いにと決めました。

当初はアパレル関係のビジネスを展開

業種は「アパレル」。仏壇仏具や法衣を手掛ける仕事に就きました。主要製品は「袈裟」。タイで縫製して日本に出荷し、全国向けに販売していました。

仏教国であるタイにはお坊さんが多いので、需要が多いはずということで、袈裟を作ってタイ国内でも販売してみました。タイのお供え屋さんに、「日本クオリティの袈裟」ということをうたって、縫製の蘊蓄・構造を記した紙をつけてみましたが、これがぜんぜん売れない(笑)

理由は、まず値段が高いこと。クオリティを維持するために、値段は下げられなかったですね。そしてタイの仏教はタイの方が日本より上だ、という意識が関係しているのか、日本のものだというだけでは受け入れられなかったようです。

日本の仏具や線香などの小売店もタイ国内に2、3店舗展開していましたが、あまりうまくいきませんでした。そこで、日本向けのものに専念しようということになりました。

北部タイ・チェンライ県に来たきっかけ

 縫製をするのにコストも技術的にもメリットがあったので、当初から頻繁に北タイには来ていました。日本向け需要に特化した展開を行うために、工場をチェンライに立ち上げることとなりました。

なぜ北タイなのか?とよく聞かれるのですが、まず北タイの人々の気質が挙げられます。縫製などのじっと集中して根気強く行うことに向いているのです。またバンコクや他のは産業が発達している地域だといろいろな仕事が選べるということもあり、スキルアップすると他社に引き抜かれるということがあります。北タイはそうした危惧もなく、職員の定着率も高いのが利点です。

工場は北タイで初めてアパレル関係にてBOI認可されました。

※BOIとは?・・・タイ投資委員会認可申請(BOI、The Board of Investment)・投資奨励法に基づきタイ政府が設置した政府機関のこと。BOIの認可があれば外国人事業法による外資規制に関係なく事業ができます。つまり外資100%での事業も可能です。

当初ビジネスは非常に順調で、仏具を手掛けながらアパレル・雑貨関係の視察ツアーも対応していました。そのご縁で京都の雑貨メーカー向けに卓上タイプの端午の節句の人形などを手がけて、日本や欧米の有名ブランドの縫製や加工の請負も行うようになりました。

2001年には独立し、ちょうどその頃今の家内と知り合い、長男も授かりました。2003年には長女が生まれ、まさに北タイに根を下ろして暮らすようになっていました。
しかしその頃、アパレル業界も波が激しく、経済的にもこれだけで続けていくのは難しいと思うようになりました。

豆腐で手に職をつける日々へ

豆腐を手がけるようになったきっかけ

2015年、日本で勤めていたリゾート会社の先輩が起したバンコクのロックアイス販売会社に入社しました。家族はチェンライに置いて、単身赴任のバンコク生活がスタートしました。

レストランなどのお店にロックアイスを営業をしていたところ、前職である日系の豆腐メーカーに声をかけていただき、豆腐製造に関する仕事を一から学ばせていただきました。

つながるチェンマイの縁・「山口豆腐店」として独立

 バンコクでは主に豆腐の生産管理を担当していたのですが、東京のリゾート会社時代の同僚が縁あってチェンマイに居酒屋を営んでおり、そちらで豆腐を扱っていただけるようになりました。他にも日本食材スーパーともご縁があり、チェンマイで豆腐の需要が高まっていました。

 チェンマイはバンコクに次いでタイ国内2番目の規模で、十分なマーケットがあります。そして長男はチェンマイ大学に通っていて、長女もチェンマイに進学予定でした。そうしたタイミングがバッチリ合って、2020年正月に家族みんなでチェンマイに移って来ました。

2020年の山口さん御一家

 シラチャでやることも考えたのですが、もしやろうとしたら一人ぼっち・全くイチからになってしまいます。家族の協力も得られて、今までの繋がりがあるチェンマイがベストと考えました。

 そして2022年9月から、「山口豆腐店」として新たなステップに進むことができました。

チェンマイの自宅を工房に改造(2021年4月完成)

Q: 豆腐作りで難しい点・苦労していることについて教えて下さい。

 もともとものづくりが好きだったからか、あまり抵抗なく豆腐作りに取り組むことができました。辛いと思ったことはなく、楽しかったですね。そういう意味では、向いていたのかもしれませんね(笑)最初の3ヶ月は毎朝6時〜7時まで豆腐作りの修行をして、それからロックアイスの仕事に向かうという生活でしたが、ちっとも辛いと思わず、むしろ楽しかったですね。

 「やれるな」と思ったのは仕入れが複雑ではなく、単一だったことです。他のものはいらない、「豆」だけ。他の飲食店だと多岐にわたる仕入れが必要ですが、豆と水しか使わない。この仕入れの単一性を見て、これならやれると確信しました。

豆腐作りの面白さ・難しさ

 豆腐作りのテクニック的には豆と水とにがりのバランスをどう取るかがポイントです。豆の量と水の量が違うと固まり方が違う。滑らかかざらついているか、そうしたものはそのバランス一つで決まって来ます。豆腐作りは「水の加減」「豆と水」「にがり」の3つだけ。そのバランスをどう取るかが美味しさに関わってきます。失敗しても、その3つのどれかに原因があるのではっきりしています。未だに絶対の決まったレシピ(着地点)はありません。

 以前は豆もいろいろな地域から仕入れていましたが、現在はチェンマイ県メーリム地区から仕入れています。それでも農家が違うと山あいで作っていたり、平地で作っていたり、生育環境が違うために豆の質が均一ということはあり得ません。ですから同じつもりで作っていても、「あれ?今日の豆腐はちょっと硬いぞ?」ということもしばしばです。

 日本の豆腐屋さんでも、一日として同じ豆腐はできないと言われています。理屈的に言っても全く同じ条件は揃うはずがないのだから、同じ品質のものというのは二度とない。毎日味が違って当たり前。そのブレをどうやって自分が好む方向に寄せていくか、ということです。

豆にこだわり、水にこだわり、食の安全にこだわり それが山口豆腐店

「全く同じものはできない」小規模生産ならではの製品づくり

 そのブレが楽しさにはつながることもありますが、「ヤバい!」と冷や汗をかくこともあります。作ってからしか結果はわからないので、多少のバラツキがあったからと言って出荷を止めるわけにはいきません。敏感な人は「ちょっと今日は水っぽい?」と言われることもありますが、完璧なクオリティを継続することは不可能です。

 工業化され大量生産されると均一化はされます。私どもの規模では均一化はなかなかできません。お客さんも「今日のはちょっと違うな?」と感じることはあると思いますが、毎回違うものなのだということをご理解いただき、そのバラツキを感じてむしろ楽しんでいただければ幸いです。それが手作り・小規模生産の良いところとも言えます。

 組織や工場が大きくなると、作っている人にとっては流れ作業になっていき、うまかろうが・まずかろうが関係なくなり、製品の均一化にはつながるのですが、ものづくりに対する意識が低下します。私たちの規模ですとダイレクトにお客さんからの声をいただくので、ますます真剣にものづくりに励むモチベーションとなっています。

豆腐づくりは特に衛生面をケア

 ものづくりで最も気をつけなければならないのは、消費者の安全です。アパレルの場合は針の混入が最も神経を使うところで、「検針」を入念に行なっていました。豆腐(食品)は直接体に取り込むものなので、「安全性=衛生面」に最も注意を払っています。

実際の工房にお邪魔して、豆腐の作り方を包み隠さずすべて見せていただきました。必見です!

地元の皆さんと商品開発・フードロス問題への取り組み

 生の豆腐と直結する「豆腐・豆乳・油揚げ」が自社工場でできる限界です。お惣菜までやって欲しいという要望を以前からお客様にはいただいておりましたが、なかなか手が回りませんでした。そこで、「おから」を使う方法を考えつきました。

 豆腐を作る工程で必ず出てくる「おから」は、通常は廃棄されてしまいます。昔からフードロス問題の解決の一環として何か活用するべきとは思っていましたが、これを無償提供する形でチェンマイ在住日本人・タイ人の生産者の皆さんに外部委託生産ができるようになりました。現在「おからシリーズ」5品目が外部生産され、豆腐と共に販売されています。

おからシリーズ

おからを使ったチーズケーキ(食品加工例)

Q: 豆腐製品の販売状況について具体的に教えて下さい

【チェンマイ】

 地元チェンマイでは、「Food Classic」「リンピンスーパー」「ねこあのね」にて各種豆腐製品を販売いただいています。また、チェンマイ日本人会やAI HOMEチェンマイでも注文販売をさせていただいております。

 和食レストランでは「Goro五郎」「チェンマイホルモン」「十べゑ(じゅうべえ)」のメニューに使われています。コロナ禍で営業面がなかなか進められなかったのですが、今後は地産地消の観点から、地元ローカル展開を強化していきたいと思っています。

(チェンマイの山口豆腐店取扱店・レストランMAP)

【チェンマイ以外】

「日本人が作っている豆腐」として、品質の良いものを作れば結果がついてくると信じて続けいててましたところ、ありがたいことに多くの引き合いをいただき、バンコク・シラチャの和食レストラン30件以上でご利用いただいています。

 シラチャの「ハーモニック」内のモール「TASTY」、バンコクでは「サイアム高島屋」でも豆腐製品を取り扱っていただております。

 今後は新たなマーケットして、アユタヤ・コラートにも出荷していきたいと思っています。

(上:サイアム高島屋・下・TASTY)タイ全国で取扱店募集中!

Q: チェンマイで「ものづくり」をしたいという日本人に、メッセージをお願いします。

 チェンマイはやろうと思ったことがすぐできる場所です。バンコクでは商品登録なども1年かかりましたが、チェンマイでは1週間でできました。マーケットは小さいですが、生産拠点としては良いと思います。

 サービスがある、人手もある、そして物流が一番の課題ですが、昔より良くなりました。昔は豆腐は陸路で運ぶのは無理でしたが、現在はローカルの物流会社のクール宅配便が数多くあります。

Q: チェンマイの良いところを教えてください。

 都会的な部分では、サービス面はバンコクと引けを取ることなく充実しており、全く不自由を感じません。規模が小さいので必要な施設・サービスが集中しているのも良いところです。自然も豊かで、のんびり過ごせるいわゆる「田舎」の環境でありながら、都市機能が成り立っている・・・そのバランスが絶妙ですね。これほど過ごしやすいところはないと思います。

 チェンライでも高いところを望まなければいいですが、ある程度のところを求めるとやはりチェンマイに勝るところはないと思います。最近では東南アジアで医療サービスが一番という調査結果もあり、ロングステイヤーにも魅力的な土地だと思います。 

山口豆腐店の商品を扱いたい業者・店舗を募集しています。

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